うな記

若者の感傷

メンタルが降伏するということ

 パワハラ*1について話していて,なぜこんなにも自分がパワハラを行う人間が無理なのかについて考えた.で,これはメンタルの病にある性質が関わっているのだと考えた.

 

アルコール依存症などを例にあげればわかりやすいとおもうが,メンタルの病には基本的に治り切るということがなく,基本的には寛解とされる,症状が治療的にコントロールされている状態に収まる,ということしかない*2.つまり,病にかかる以前,そして病が収まった後はともに症状がないという点で表面上一致しているけれども,実態は全く違うのだ.すこし力を加えれば,転がり落ちるように症状が復活するわけである.

このメンタルの不可逆な変化は材料が降伏する様子に少し似ている.

 

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*3

 

材料に応力を加えていくとひずみが比例的に大きくなる.弾性域にいる間は,力を取り除くとひずみはもとに戻る.しかし,降伏以後は塑性変形となり,力を取り除いてもひずみはなくならず,また応力に対する挙動も異なったものになる.力を加え続ければやがて破壊にいたる.一度塑性変形に移行したものは不可逆なのだ.

 

この不可逆性こそが,精神病理の一番きびしいところなのだと思う.そして,パワハラはこの不可逆な変化にコミットしてしまうことが多々ある.それ以前/以後で,彼/彼女の人生の前提条件が一変してしまうのだ.この重大さをパワハラをついやってしまう人間は理解しているのだろうか?そして,これらはそういう人だからということで見過ごされていいものなのだろうか?全くそうは思えないのだ.